弟が亡くなって、一年が経ちました。
息子が小学5年生、実弟が40代後半のときに膵臓がんが見つかりました。それから治療を続けてきましたが、病気には勝てず、昨年10月、この世を去りました。
あれから一年。時間が過ぎるのは本当に早いものです。
当時の私は、弟の病気のことに加えて、息子が所属していたサッカーチームのコーチとの関係にも悩まされていました。
実は、息子が入団する前にも、そのコーチに関係するトラブルがあり、3人の選手がチームを辞めていました。入団した当初は理由が分かりませんでしたが、同じチームの保護者から話を聞くうちに、いろいろな事情が見えてきました。
ほかにも驚くような話がいくつもあり、正直、あきれることばかりでした。
入団前にわたしがコーチと交わした約束も、入って間もなく一方的に破られました。詳しいことはここでは書きませんが、当時の対応は、今思い出しても気分が悪くなるほどです。
弟の病気への不安を抱えながら、サッカーチームのことでもストレスが重なり、何度か、息子をチームから辞めさせようと思いました。
それでも、息子はサッカーを楽しんでいましたし、後から入ってきた仲間たちとのつながりもありました。親の都合だけで、その環境を簡単に変えてしまっていいのか。そんな思いもあって、結局、2年間通わせることになりました。
今振り返っても、あの頃は本当にいろいろなことが重なっていたと思います。
「もしかしたら、これが最後になるかもしれない」
人が亡くなる前には、言葉ではうまく説明できないけれど、
「もしかしたら、もう会えないかもしれない」
と感じることがあります。
以前、海外でお世話になった方が、がんで闘病されていたときのことです。
家族で会いに行ったとき、訪問前から心のどこかで、これが最後になるかもしれないと感じていました。その数か月後、その方は亡くなりました。
また、がんで闘病していた親族のところへ、妻と息子と3人で会いに行ったこともあります。その方も、数か月後にこの世を去りました。
そして、今回は実の弟でした。
病状を考えると、もう長くないのかもしれない。そんな思いが頭をよぎりました。
少しでも長く生きてほしい願いもあり、私だけお見舞いに行くことにしました。
病院へ向かう前に、息子から弟へビデオメッセージを撮ることにしました。
息子にサッカーボールを持ってもらい、カメラに向かって話してもらいました。
「体調がよくなったら、僕の試合を観にきてください!」
短いメッセージでしたが、息子らしい、まっすぐな言葉でした。
その動画をスマートフォンに収め、病院へ向かいました。
ベッドで横になっていた弟に、息子のビデオメッセージを見せました。
画面の中で、一生懸命に話す甥っ子の姿。
動画を見終えた弟は、目頭を押さえていました。
そして、小さな声で、こう言ったのです。
「応援してるから」
声はとても小さく、耳を近づけなければ聞こえないほどでした。
それでも、その言葉は今でもはっきりと心に残っています。
体調がよくなったら試合を観に来てほしい。そんな息子の願いに対して、弟は「応援してるよ」と返してくれたのです。
そのとき、弟がどんな気持ちだったのか、すべてを知ることはできません。
ただ、弱っていた弟が、息子のために最後まで言葉を返してくれたこと。それが、私にとって大切な思い出になりました。
これからも、空の上から
そして、弟が亡くなって一年。
家族でお見舞に行くべきだったのかどうか、いまも頭の中で回っています。
朝練を終えた息子と、二人でお線香をあげました。
「おじさんが上で応援してくれてるから、きょうはお線香をあげよう」
そう声をかけると、息子も一緒に手を合わせてくれました。
弟が生きていたら、今の息子のサッカーをどんな気持ちで見てくれただろう。
試合で活躍したときは、きっと喜んでくれたでしょう。うまくいかない日があっても、変わらず応援してくれたのだと思います。
サッカーは、いつも楽しいことばかりではありません。思うようにプレーできない日もあれば、悔しい思いをすることもあります。
それでも、息子には自分の目標に向かって、一歩ずつ進んでいってほしいと思っています。
そして、つらいときや壁にぶつかったときには、あの日の弟の言葉を思い出してほしい。
「応援してるから」
あのとき、ベッドの上で弟が伝えてくれた言葉は、今も私の心の中に残っています。
弟が亡くなって一年。
もう直接、息子の試合を観てもらうことはできません。
けれど、あの日の約束は、形を変えて続いているような気がします。
これからも息子がサッカーを続けていく限り、弟は空の上から応援してくれている。
そんなことを思いながら、今日も息子と一緒に手を合わせました。
がんばるんだよ。
























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